長期にわたり登記されず所有者が不明になっている土地の問題について、今年の国会に解消の第一歩となる新法が提出される見通しだ。新法の中に盛り込まれるのが、法務局・地方法務局にいる登記官が、所有者不明土地の相続人を調査できるようにする制度。登記官は相続人に登記を促すこともできるとされており、ある日突然、法務局からあなたの家に「登記してください」と連絡が来るかも!?
誰が相続人?
所有者不明土地が生まれるのは「所有者が誰なのかをはっきりさせるためにする登記」(権利登記)が義務ではないため。
都市部の土地のように利用価値が高いならば権利関係をはっきりさせるメリットはある。しかし、原野や山林など利用価値のない土地は、特に登記するメリットがないために相続発生時に放置されることがある。
そして、相続は親から子へ、子から孫へと代々行われる。代を経るごとに関係者も増えることが一般的なので、誰が相続人なのかよく分からなくなってしまうことになる。
「所有者不明土地問題研究会」(座長・増田寛也元総務相)の推計では、このように長期間未登記の土地の総面積は九州の面積(約368万ヘクタール)を上回る約410万ヘクタールにも上っていた。
相続人探索が公共事業の足かせに
未登記の土地の相続人を探すことは可能だが、最後に登記した人の戸籍からたどるなどしなければならず膨大な手間がかかる。公共事業の用地取得などでは、この相続人探索の手間が大きな負担となっている。
国土交通省によると、道路を新設するために、一部予定地の地権者を調べたところ、最後に登記されたのが明治37年。その後、調査したところ法定相続人は148人にも上り、土地収用手続きのために約3年もかかった例もあるという。
そこで新法では、登記官が公共事業の予定地などに関する情報に基づき、その範囲の中で長期間登記が変更されていない土地を調査。その上で、登記名義人が死亡してからおおむね30年以上経過した土地があれば相続人を探し、相続人に登記を促すとともに、公共事業実施主体に相続人の情報などを提供できるようにする。
「登記官は登記のプロなので、現在のように公共事業の実施主体が調査するよりも時間の短縮が期待できる」(法務省幹部)としている。
所有者不明土地をめぐっては、研究会から登記の義務化などが提言されており、この新法が成立してもさらに紆余(うよ)曲折がありそうだ。
法務局・地方法務局 土地や建物の所有者や所在地などを記録する「不動産登記」や、会社の商号・代表者などを記録する「商業・法人登記」のほか、人権啓発活動や戸籍・国籍に関する事務などを行う役所。全国に50カ所ある。
引用元:産経新聞